糖尿病治療のこつ
ヘモグロビンA1cを下げるための3つのコツ
こんにちは、赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。
本日は、糖尿病でお悩みの方から一番相談が多い糖尿病に良い生活習慣についての解説記事を書きます。
主に「食事のコツ」、「運動のコツ」、「医療機関との付き合い方のコツ」について書きたいと思います。
ヘモグロビンA1cを下げる食事のコツ
糖尿病の食事療法について、インターネットで調べるといろんな情報がヒットして、情報が多すぎて迷ってしまうと思います。
当院では、シンプルに「血糖値が緩やかに上げる食べ方」を推奨しています。
そのために以下の3つの情報提供を行っています。
- 糖の吸収が早い食事とゆっくりな食事を意識
- 糖質以外の食事について知る
- 間食の上手な食べ方を知る
① 糖の吸収が早い食事とゆっくりな食事を意識
糖の吸収が早いと、血糖値を下げるインスリンが間に合わず血糖値が高い状態が持続して、糖尿病の状態が悪くなります。
糖質には「単純糖質」と「複合糖質」という二つの糖質があり、前者が吸収が早い糖質で、後者が吸収がゆっくりな糖質になります。具体的には以下のような食事があります。
〇 吸収が早い糖質 (単純糖質)
- 清涼飲料水(ジュース・コーラ・乳酸飲料・栄養ドリンクなど)
- 甘い菓子パン(あんパン・ジャムパン・クリームパンなど)
- 菓子(ようかん・まんじゅう・大福など)
- 果物 など
〇 吸収がゆっくりな糖質 (複合糖質)
- ご飯
- パン
- 麺類
- かぼちゃ
- 芋類(じゃが芋、さつまいも、里芋など)
- とうもろこし
- くり
- 大豆以外の豆類(小豆、インゲン豆、おたふく豆など)など
② 糖質以外の食事について知る
糖質の多い食品でも、他の食材と組み合わせることによって糖質の吸収を緩やかにできます。
そのため、以下の食品は積極的に組み合わせて食べると良いです。
- 食物繊維の多い糖質(玄米・ライ麦パンなど)
- タンパク質(大豆製品や魚・卵など)
- 野菜・海藻・きのこ など
これの食材は、糖質の吸収を緩やかにするだけでなく、たんぱく質が筋肉を作ったり、ビタミンが血管を酸化ストレスから守る効果も期待できます。
③ 間食の上手な食べ方を知る
どんなに食事療法を頑張っていても、どうしてもおやつが食べたいときはあると思います。
当院ではその際には工夫して食べることを勧めており、それでも控えた方が良いものと、これならある程度許容できるものを意識するように伝えています。
● 控えた方が良いもの
- 和菓子
- ケーキ
- 野菜ジュース
- 果物ジュース など
特に健康に良いと聞いて、野菜ジュースを飲んでいる患者さんが非常に多いのですが、液体になった糖質は吸収が早いので血糖値が急激に上がります。
(私もジュースを飲んだ1時間後に血糖値は測定してみたことがあるのですが、血糖値が上昇していて驚きました。)
● ある程度許容できるもの
- 果物
- ナッツ類
- 無糖のコーヒーや紅茶 など
一方で果物は単純糖質ですが、食物繊維が含まれており比較的吸収がゆっくりになるのでどうしても食べたいときは果物を少量食べることを勧めています。
また甘味ではなく、コーヒーや紅茶など香り高いものを選んで、食べたいという気持ちを置き換えるという方法も勧めています。
ヘモグロビンA1cを下げる運動のコツ
糖尿病に運動は非常に有効です。
運動を行うと、体の糖分の利用が進み血糖値が下がると同時に血糖値を下げるインスリンが効きやすくなります。
また、糖尿病になると筋肉・骨が脆くなりやすいと言われており、これらを守る意味でも運動は非常に有効です。
糖尿病の運動として、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」という運動があります。
〇 有酸素運動
有酸素運動とは、歩行・ジョギングなどの全身運動のことを指し、週3-5日ぐらいの頻度で30分ほど行うとベストです。
〇 レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋力トレーニングのような運動を指しますが、ご高齢の方は踵上げや足上げでも良いです。週2-3日行うとベストです。
ちなみに当院が推奨する運動は、水中歩行です。
水中歩行は学会でも推奨されている「有酸素運動」と「レジスタンス運動」の両方を一気にできる運動の一つです。
ケガも少ないのでご高齢の方にも最適と考えます。
医療機関との付き合い方のコツ
当院に通院されている糖尿病の患者さんでも、医療機関との関わり方で悩まれて当院に転院して通院されている患者さんが一定数いらっしゃいます。
Q どんな医療機関に相談すればよいですか?
一般的な内科のクリニックで糖尿病の診療をやっていることは多いので、近隣の内科のクリニックにご相談すると良いと思います。
中には、糖尿病に特化して診療しているクリニックもあるので、そのような医療機関があればそこにご相談することも可能です。(日本糖尿病協会という公的な団体があり、医療施設を検索できます。詳しくは「医療施設検索:日糖協データーベース」のページをご参照ください。)
個人的には、糖尿病は長い付き合いとなる病気なので、2週間分しか薬を出さないなど不必要に通院をさせるクリニックはあまり推奨しません。
糖尿病の治療を長く続けられるようサポートしてくれる医療機関への通院が良いと思います。
ちなみに当院では利便性と安全性のバランスを検討した結果、安定している糖尿病の患者さんには2か月処方にしています。
中には3か月処方をしている医療機関もあります。ご多忙で、非常に安定している方は3か月処方のクリニックを検討されても良いかもしれません。
よくある質問
Q 薬を飲みたくないのですが、食事と運動ですべて治療をすることは可能ですか?
これは、時と場合によります。
例えば、ヘモグロビンA1cが7.0%以下であれば薬ではなく、栄養指導などを受けて頂き食事・運動の治療を先に行い、コントロールが出来るようであれば薬なしで治療を続けることも可能です。
一方で、ヘモグロビンA1c9.0%の方であれば、まずは投薬を勧めます。その後生活習慣を改善して状態が落ち着けば減薬・休薬も検討できるのでまずはヘモグロビンA1cを7.0%以下に下げることをお勧めします。
Q 糖尿病の治療で一番怖いことはなんですか?
糖尿病の治療でもっとも怖いのは、低血糖です。
下がれば下がるほど良い訳ではなく、正常値の範囲にすることが大切です。
Q 高齢者でも血糖値をしっかり下げた方が良いですか?
高齢の糖尿病患者さんでは状況に応じて血糖の治療を緩やかに行うことがあります。
これは低血糖を防ぐためです。
特に以下の場合は、通例の目標であるヘモグロビンA1c7.0%以下を8.0%以下に緩めることがあります。
- 認知障害がある
- ADLが低下している
- 併存疾患がある
高齢者糖尿病については、「高齢者糖尿病治療ガイドライン」というガイドラインが日本糖尿病学会から発行されており、以下のような表でまとまっています。(ガイドラインについてはこちらをご参照ください。)
Q 自力で糖尿病を治すことはできますか?
「治す」ことはできませんが、「治療」することについては時と場合によってはできることがあります。
特に目安としてヘモグロビンA1c7.0%以下の状態であれば、食事や運動の治療で糖尿病のコントロールを行うことが可能なこともあります。
当院では管理栄養士や糖尿病を専門とする看護師が生活習慣の治療を提案する外来があり、自力での治療をするを推奨しているケースもあります。
当院を受診希望の方へ
当院では糖尿病の診療を行っております。
中でも管理栄養士や運動療法士が在籍しており糖尿病の食事・運動の治療に力を入れております。
今まで通院したことのないクリニックに受診するのは、勇気がいると思いますし、その気持ちはすごく分かります。
その上で、ご不明な点等ございましたら遠慮なくお気軽にご相談ください。
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