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慢性閉塞性肺疾患

概要

慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は、たばこの煙などに含まれる有害物質に長期間曝露されることにより肺が持続的な炎症を起こし、肺胞壁が破壊されて隣り合う肺胞同士が結合し、肺の中がスカスカの状態になるために呼吸機能の低下などが引き起こされた状態です。かつての肺気腫と慢性気管支炎を合わせてCOPDと呼ばれます。日本における原因のほとんどは喫煙です。中高年で発症することが多いですが、初期は自覚症状が乏しく進行もゆっくりなため、高齢になり症状が悪化してから発見されるケースが増加しています。男女別患者数は、日本では女性よりも約2.5倍男性のほうが多いとされています。COPDの認知度は25%程度にとどまりますが、日本人の死因10位であり、肺炎や肺がんなど重篤な肺疾患を起こす危険性も持っています。そのため、早期発見と早期治療が必要とされています。

原因

鼻や口から取り込まれた空気は、気管を通って肺へと送りこまれます。肺の中にある肺胞というところでは、血中に酸素を取り込むと同時に、体内にある二酸化炭素の排出を行なっています。慢性閉塞性肺疾患では、肺胞と末梢気道(肺胞につながる細い気管支部分)が炎症を起こし破壊されてしまうため、呼吸器症状が出るようになります。肺胞が破壊される原因として挙げられているのが、有害な物質を長期間吸入することであり、特にタバコとの相関関係が強く指摘されています。喫煙者はもちろんですが、本人に喫煙習慣がない場合でも、受動喫煙によりたばこの煙にさらされる機会が多いとリスク因子となります。また中国ではPM2.5による大気汚染が、慢性閉塞性肺疾患の原因として報告されています。遺伝的な要因として発症することもありますがアジア人においては非常にまれです。その他、胎児期や新生児期にたばこの煙にさらされる環境にあると、肺の成長が妨げられ、慢性閉塞性肺疾患の発症リスクが高くなると考えられています。

症状

主な症状として、咳と痰、運動時の息切れ(呼吸困難)が挙げられます。これは特に激しい運動ではなく、例えば坂道や階段をのぼるといった軽い動きであっても息苦しさを感じるようになります。ただし、初期であれば少し経てば収まることも多いです。肺気腫を発症する患者は慢性気管支炎も併発していることが多いため、気管支炎の症状として咳や痰が出やすいですし、呼吸時に「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」と音が鳴る喘鳴(ぜんめい)の症状が出る場合もあります。労作時の呼吸困難は老化によるものと勘違いされることも多く、見逃されることもめずらしくありません。症状が進行すると、安静時でも息苦しさを感じるようになります。この他、体重が減少し、痩せるといった症状が見られることもあります。また、喫煙習慣のある方では、気管支粘膜に炎症が起きやすく普段から咳や痰の症状を伴う方も多いため、いつもの症状と見過ごされてしまうことも多々あります。

検査・診断

慢性閉塞性肺疾患の診断には、スパイロメトリーと呼ばれる呼吸機能検査を実施します。この検査では、スパイロメーターという装置を用いて、呼気量や吸気量を測定し、肺活量や努力性肺活量、1秒量、1秒率を調べます。慢性閉塞性肺疾患は、息を吐き出しにくくなる病気なので、1秒量が低下し、1秒率の値も小さくなります。気管支拡張薬を使用した後の1秒率が70%未満である場合に慢性閉塞性肺疾患と診断されます。また、スパイロメトリーで得られる1秒率の値から、その呼吸機能の重症度に応じてI〜Ⅳ期に分類されます。必要に応じて、胸部エックス線検査を行って肺の状態を確認し、さらに精密な検査が必要な場合はCT検査を行います。他には、痰を採取しての検査や血液検査、心電図、心臓エコーなど、状況に応じて検査を行います。

治療

持続的な炎症により破壊されてしまった肺胞組織を元に戻すことはできません。そのため、慢性閉塞性肺疾患では、病気の進行を抑えることと、出ている症状を緩和し生活の質の維持および向上を目的とした治療が行われます。原因のほとんどは喫煙であるため、喫煙習慣のある方にはまず禁煙していただくことになります。薬物療法としては、気管支を拡げる効果のある長時間作用性の抗コリン薬とβ2刺激薬が用いられます。衰えてしまった呼吸機能を回復・維持するための呼吸リハビリテーションを併せて行うことも有効とされています。重症度が高く呼吸が困難な患者さんに対しては、鼻にチューブを装着して酸素ボンベから酸素を吸入する、在宅酸素療法を行います。

予防/治療後の注意

予防をする上で最も大切なことは、喫煙者であればできるだけ早く禁煙することです。二次喫煙にも気をつけなくてはいけません。また、慢性閉塞性肺疾患は初期の段階では症状が出にくいため、定期的に健康診断を受けて早期発見・早期治療につなげることが重要となります。風邪やインフルエンザなどにかかると急性増悪と呼ばれる状態になり、症状が一気に悪化して命に関わるケースもあります。このため、日頃から手洗いとうがいを徹底し、ウイルスや細菌の感染を防ぐことも大切です。

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