漢方診療
総合診療という観点から、西洋医学のみでの解決が難しい場合に東洋医学が有効な時があることを知り、専門施設での漢方診療の研修を行ってきました。日本東洋医学会の漢方専攻医として対応いたします。漢方診療を希望される方は是非ご相談ください。
漢方医学とは
漢方医学は、西洋医学とは異なった診断体系に基づく独自の診断方法により、漢方薬などを用いた治療を進める診療科です。中国を起源としますが、日本で独自の発達を遂げたもので、病気や不調の背景となっている体のバランスの悪さを改善することで体調を整えていく治療法です。病気の種類でみなさんに同じ薬を処方するのではなく、同じ病名でもその人の体質にあわせて薬を選択していきます。
対象疾患・処方について
漢方治療は、漢方薬を処方し、人間がもともと兼ね備えている「自然治癒力」を高め、体調を整えることが基本となります。そのためには、診断病名のみで治療方法を決めるのではなく、それぞれの体質や病気の状態を見極め、最適な薬を使い分けていくことが重要です。
同じ症状、同一病名だからといって、同じ漢方薬を使用するわけではありません。数種類の漢方薬を組み合わせて服用した方が良いのか。西洋医学の治療薬を併用した方が良いのか。患者さまの体質などにより、様々な要素を検討し、オーダーメイドで処方していきます。
最近は一般的な医療機関で、漢方薬の処方が行われるようになってきましたが、漢方医学的な診断に基づいた治療が行われているケースは少ないのが実状です。漢方薬による治療効果を発揮するには、漢方医学に精通した医師による処方が欠かせません。
当院で処方しているのは「医療用漢方製剤」と呼ばれる各メーカーのエキス剤であり、一つの漢方薬は複数の生薬から生成されています。いずれも健康保険が適応される薬です。エキス剤は粉薬が殆どですが、一部にカプセル剤や錠剤を使うことがあります。当院では煎じ薬は扱っておりません。
この様な方はご相談を
- 自覚症状があるものの、検査をしても異常が見つからないと言われた
- 西洋医学的な治療を受けたが、十分な効果が得られなかったと感じている
- 西洋医学で処方された医薬品の副作用に悩んでいる(抗がん剤による副作用も含みます)
- 夏バテ、身体がだるいなどの症状がある
- 冷えやのぼせ、肩こり、便秘、下痢などの不調に悩んでいる
- ストレスをため込みやすく、不安やイライラ、不眠などに悩んでいる
- 立ちくらみ、めまい、頭痛などがある
- 虚弱体質で疲れやすく、風邪をひきやすい
- 浮腫みやすく、身体が重い
西洋薬との相乗効果が期待される疾患
- 慢性胃腸炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病
- 慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎
- 慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全
- 気管支喘息、慢性気管支炎
- 脳血管障害後遺症、末梢神経障害、頭痛
- 痛風・関節リウマチなどの関節炎
- 変形性脊椎症、腰椎・頸椎椎間板ヘルニアなどによる神経痛
- 神経症、適応障害、自律神経失調症
- アトピー性皮膚炎、じんましん、慢性湿疹、乾癬、脱毛
- 慢性膀胱炎、排尿障害、尿失禁、夜間頻尿、夜尿症
- 更年期症候群、月経困難症、月経前症候群、月経前不快気分障害、不妊症 など
診察の仕方について
日本における伝統的な漢方の診察方法を用います。「望診(ぼうしん)、問診(もんしん)、聞診(ぶんしん)、切診(せっしん)」と呼ばれる診察法で、漢方医学的にどういう体質かを診断し、それにより薬を決定します。
望診(ぼうしん)
視診、つまり肉眼で見る診察法で、歩き方や顏色、皮膚、爪、頭髪、舌など、全てが診断の参考となります。なるべく化粧をせずに受診してください。また、舌につきましては、舌の色、厚み、舌質など、漢方的な情報を得られる部分が多いので、舌の苔を歯ブラシで落としたりせず、自然のままを診せてください。
問診(もんしん)
自覚症状は大変重要です。問題の病気と関係ないと思われることでも、全身のバランス状態を知る上で大切なことがあります。重要とされる内容は、寒(冷え)、熱、汗、食欲、便通、排尿、頭痛、肩こり、腰痛などです。現在の症状やこれまでにかかられた病気などにつきましては、診療の際に詳しくお聞きいたします。
聞診(ぶんしん)
話し方や、声の大小、腹鳴、呼吸状態などを聴覚で、口臭、体臭などを嗅覚で診断します。
※受診時は、コロンや香水は付けないようご注意ください。
切診(せっしん)
医師が直接患者さんの身体に触れて診察する方法のことで、「脈診」と「腹診」があります。
- 脈診・・・脈の速さや強さ、リズムなどで診断します。これらは患者さんの状態により微妙に変化します。急性感染症(風邪など)の場合は脈だけで診断することもあります。
- 腹診・・・漢方では、お腹は全身のバランス状態をよく反映すると考えます。そこで、病気によらず腹部の緊張度、発汗、皮膚の温度、しこりがあるかないか、お腹を叩いてみてチャポチャポいわないかなどを観察します。そのため、着脱しやすい服装でお越しください(女性の方はボディースーツやワンピースなどは避けてください)。診察の際は、おへその周りが出るようにしてベッドに横になり、両手・両足を伸ばし、全身の力を抜いてください。
副作用について
一般に漢方薬は西洋薬に比べて副作用が少ないというイメージがあるかと思いますが、漢方薬もれっきとした薬剤ですので頻度は少ないとはいえ注意すべき副作用があります。例として、偽性アルドステロン症、間質性肺炎、皮疹、消化管症状、肝機能障害などが挙げられます。漢方薬の副作用はその薬を構成する生薬によっておこるものです。そのため、処方されている薬剤ごとにどのような副作用に注意すべきかが異なります。詳細はこちらをご覧ください。
当院副院長は医療法人KMG小菅医院(漢方医学部門)小菅孝明先生に師事し、漢方専門研修を受けています。