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睡眠時無呼吸症候群

概要

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に空気の通り道である“上気道”が狭くなることによって、1時間あたり5回以上の無呼吸(10秒以上呼吸が止まること)・低呼吸状態を繰り返す病気のことです。いびきを伴うことがほとんどとされています。成人男性の3~7%、成人女性の2~5%程度に見られる比較的頻度の高い病気です。主な原因は肥満による喉周りの脂肪ですが、顎が小さい、舌が大きい、扁桃が大きいといった生まれつきの身体的特徴や慢性的な鼻炎などが原因となることもあります。睡眠中の無呼吸やいびきによって良質な睡眠が妨げられ、日常生活に支障を来し、日中の眠気による事故などにつながりやすいことなどが大きな問題となっています。また、睡眠中に体内の酸素量が不足しがちになることで全身のさまざまな部位に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる合併症を引き起こしやすくなることも分かっていますので、できるだけ早期の肥満の改善や治療を行うことが必要です。

原因

睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸の原因によって“閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)”と“中枢性睡眠時無呼吸(CSAS)”に分類されます。OSASは、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなったり、一時的に閉塞したりすることによって発症します。上気道が狭くなったり閉塞したりする主な原因の多くは、肥満による首や喉周りの脂肪であり、横になると重力にしたがって気道を圧迫し通り道が狭くなります。その他、生まれつき舌の付け根や扁桃が大きかったり、顎が小さかったりすることで、横になると舌根沈下(舌の根元が喉に垂れ下がって上気道を狭くする)などが生じやすくなることも大きな原因となります。小児ではこのような生まれつきの身体的特徴が原因になることもあります。また、そのほかにも慢性的な鼻炎や鼻中隔彎曲症びちゅうかくわんきょくしょうなど鼻の病気によって空気の通り道が狭くなることも原因として挙げられます。CSASは、脳、神経の中で呼吸をつかさどる延髄の“呼吸中枢”の異常によって、正常な呼吸運動ができなくなり発症するタイプです。詳細は分かっていませんが、脳梗塞や脳出血の後遺症、生まれつき脳に奇形があるケースなどで発症しやすいとされています。

症状

睡眠中に、10秒以上の無呼吸と強いいびきを繰り返すのが特徴です。呼吸が一時的にでも停止すると、血中の酸素が不足し、睡眠が浅くなりがちになり、夜中に何度も目が覚めたり、呼吸が苦しくなる夢を見たり、起床時に疲れが取れていなかったりと、しっかりと体を休めなくなってしまいます。慢性的な睡眠不足の状態に陥ることから、日中の眠気や起床時の頭痛などを引き起こし、記憶力や集中力が低下することもあります。居眠りなどにより思わぬ事故を起こしやすくなるとされています。その他、気分が落ち込み、うつ状態が現れるケースもあります。さらに症状が進むと、高血圧や不整脈、動脈硬化を促進するという報告もあり狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こす危険性が通常よりも3~4倍増加することが分かっています。特に1時間の睡眠中に無呼吸または低呼吸が30回以上ある“重症”タイプでは、心臓や脳の病気になる危険性が5倍にもなることが明らかになっています。

検査・診断

まず問診で、「日中に強い眠気を感じるか」、「最近、集中力や記憶力が低下していないか」、「家族などから、いびきを指摘されているか」など、睡眠時無呼吸症候群が疑われるような症状がないかを確認します。その上で、睡眠の質や睡眠中の呼吸の状態を調べるために、自宅で行うことができる睡眠ポリグラフ検査を行います。睡眠ポリグラフ検査は、携帯用の医療機器を用いていびきの状態や空気の流れを感知するセンサーを鼻の下に、血液中の酸素濃度を測る機器を指に装着した状態で眠り、睡眠中の呼吸状態や上気道の狭窄の有無を評価する検査です。さらに詳細を調べるために精密検査を行うこともあります。精密検査では医療機関に入院した上で、脳波や心電図、眼球や胸の動き、口と鼻の空気の流れ、血液中の酸素濃度を測るセンサーを装着した状態で眠り、睡眠中の姿勢やいびきの音などを調べます。簡易検査よりも睡眠の質や呼吸状態をより詳しく評価することができます。睡眠時無呼吸症候群は大きく分けると3種類に分類され、脳や神経などの異常で呼吸をするための筋肉への指令が行き届かなくなる「中枢型」(CSAS)、肥満などにより気道の上部(喉)が塞がってしまうことが原因の「閉塞型」(OSAS)、中枢型と閉塞型が混ざっている「混合型」があります。

治療

睡眠時無呼吸症候群では肥満が原因となっている方が多いため、まずは生活習慣の改善による減量が必要となります。睡眠ポリグラフ検査で睡眠時1時間あたりに無呼吸や低呼吸になった回数が20回以上で、なおかつ日中に眠気などを自覚しているケースでは、睡眠中にマスクから強制的に空気を送り込んで狭くなった気道を広げる“経鼻的持続陽圧呼吸療法:CPAP両方”が行われます。この治療を行うことで、心筋梗塞や脳卒中などを発症する危険性を通常と同程度まで低下させることが分かっているため、全国的にも広く行われています。顎が小さい、舌が大きいなどが原因の場合は、下顎を前方へ移動させるようなマウスピースの装着が行われることもあります。小児などに多いアデノイドや扁桃肥大、鼻中隔彎曲症などの器質的な異常が原因となっている場合は、扁桃摘出術などその原因を改善するための手術が行われることも少なくありません。

予防/治療後の注意

睡眠時無呼吸症候群は、家族などの周囲から「いびき」を指摘されることで発覚するケースも珍しくありません。いびきが気になる人や、日中の眠気や疲れやすさなどに悩んでいる人は、早めに専門の医師による診察を受けることが必要です。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の人が合併しやすいこともわかっているため、健康的な食生活や適度な運動を心がけることが大切となります。睡眠時無呼吸症候群は狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こす危険性が高いことがわかっているので、適切な治療を受け続けることが大切です。

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