メニュー

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

概要

心臓は1日に約10万回も収縮・拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。この収縮・拡張する心臓の筋肉(心筋)に、酸素や栄養を含む血液を送り込んでいるのが、心臓のまわりを通っている冠動脈という血管です。虚血性心疾患は、この冠動脈という血管が、狭くなったり硬くなったりして、心筋へ十分に血液を送れなくなることで発症する疾患の総称です。代表的なものは、血流が悪くなることで心筋に十分な血液が行かず、胸が痛くなったり呼吸困難になったりする「狭心症」。冠動脈に血栓ができて詰まり、血液の流れが完全に止まって胸に痛みや圧迫感が持続する「心筋梗塞」です。心筋に血液が行かないとその部分が壊死してしまい、壊死の部分が大きくなると心臓の収縮・拡張ができなくなるため、命にかかわる危険な状態となり、緊急の治療が必要です。

原因

虚血性心疾患は動脈硬化が主な原因とされていますが、家族歴、男性であることなども危険因子として挙げられます。動脈硬化は、老化に加えて、高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病や喫煙によっても進行します。これらを危険因子として、年齢が進むにつれて血管の内膜にコレステロールなどの脂肪が沈着し、血管(冠動脈)が狭くなり内膜の細胞が壊れ、血栓ができて血管が詰まることによって発症するものを心筋梗塞といいます。血管が狭くなり、血流が悪くなった状態で急に激しい運動をしたり、強いストレスがかかったりすることによって発症するものを狭心症といいます。寒さによる刺激や喫煙がきっかけで血管がけいれんし、狭心症を起こすこともあります。

症状

心臓は筋肉が酸素不足になると痛みを感じます。狭心症、心筋梗塞共に冠動脈の血液の流れが悪くなり、心筋に酸素不足が生じる結果、胸や背中に感じる強い痛みや圧迫感、息苦しさ、胸から肩へと続く痛み、冷や汗などの症状を自覚します。より重篤な場合は、意識障害や心肺停止状態に陥ることもあります。痛みの持続時間は、「狭心症」では長くても20分、「心筋梗塞」では20分以上続くことが多いとされています。狭心症の初期症状は、「走ったり、階段や坂道を上ったときに締め付けられる様な胸の痛みが数分間続くが、安静にすると症状が軽快する。」「早朝のトイレや洗面時に胸が痛んだり、痛みで目が覚めたりする。」が特徴的です。心筋梗塞の場合は「運動時、安静時に関わらず突然20分以上激しく胸が痛み、動悸、息切れ、めまいなどの症状もある。」が特徴的です。一方、糖尿病患者さんの場合、それらの症状への感受性が低くなってしまっているために、症状を自覚する時にはすでに重篤な状態であることがあるので注意が必要です。

検査・診断

虚血性心疾患の診断にあたってはまず、狭心症や心筋梗塞が疑われる症状があることを確認します。そして虚血があるか否かを調べるために心電図検査を行うと同時に、壊死した心筋の成分の有無を調べる血液検査、心不全の重症度の参考となる胸部レントゲン検査などを行います。狭心症の場合には症状が出ているときの心電図が必要となるため、運動時の心電図を記録する装置(運動負荷心電図)が使われます。また心筋の収縮力や血流をチェックするため、超音波(心エコー図)検査、心筋シンチグラフィー(微量の放射線物質を注射し、心臓各部へ血流が届いているかを調べる検査)などの画像診断を実施します。MRI検査で心筋の動きや状態を観察することもあります。冠動脈のCT検査では、冠動脈の狭窄を視覚的に観察できます。

治療

治療法は主に「薬物療法」、「冠動脈形成術(カテーテルを用いた手術)」、「冠動脈バイパス手術」の3つが挙げられます。薬物療法については、血管を広げる薬や動脈硬化の進行を抑制する薬、血液を固まりにくくする薬などが用いられます。冠動脈形成術は、狭くなったり詰まったりしている冠動脈を、カテーテル法によって広げる血管内手術のことです。原則的に局所麻酔で手術時間は短く、患者の身体的負担は比較的少ないとされています。カテーテル治療が難しい場合は、血管をつなぐ冠動脈バイパス手術が行われます。これらの治療は、狭窄・閉塞している冠動脈の数、部位などを参考に決定されます。虚血性心疾患は、時間経過とともに心不全が重篤になる危険性が急速に高まるため、一刻も早い治療が必要となります。その他、心臓の筋肉の動きを改善するためのリハビリテーション、食生活指導なども組み合わせて行うことになります。

予防/治療後の注意

虚血性心疾患は冠動脈硬化のために起こります。これを予防するためには動脈硬化を予防しなくてはいけません。年齢、性別、身長・体重・腹囲など、喫煙、飲酒などの生活習慣、そして、血圧、脂質、血糖など、管理の対象となる検査数値、すべての面から望ましい形を考える必要があります。具体的には、血圧は140/90mmHg未満、脂質は、LDLコレステロールは140 未満、HDLコレステロールは40 以上、トリグリセライドは150 未満が目標です。血糖は125 以下、ヘモグロビンA1cは6.5%未満が理想的です。喫煙者の方は禁煙しなくてはいけません。飲酒量が多い方は、ビール(度数5 %)500 mlまで、清酒(12.5 %)一合まで、焼酎(25 %)100 mlまで、ウイスキー(40 %)ダブルで一杯以下までに減量するのがよいでしょう。その他、6g/日未満の塩分制限、350g/日の野菜摂取、6000~10000歩/日程度の運動、排便習慣の改善などが望ましいとされています。尿酸値や腎機能障害の合併にも注意を払う必要があります。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME